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楽天などで「3Dフードプリンター」と検索すると、食材を積み上げる機械と、食品の表面に絵を刷る機械が同じ一覧に並びます。どちらも「3Dフードプリンター」として売られていますが、出てくるものは立体と絵で、別のものです。まずその分け方から書きます。
「3Dフードプリンター」は2種類が混ざっている
ひとつは造形するタイプです。ペースト状にした食材をノズルから押し出し、層を重ねて立体にします。名前のとおりの「3D」はこちらです。
もうひとつは印刷するタイプです。ケーキ・クッキー・コーヒーの泡・可食シートといったすでにある食品の表面に、食用インクで絵や写真を刷ります。立体は作りません。ラテアートプリンター、フードプリンターと呼ばれているものの多くはこちらです。
販売ページで見分けるときは、次の言葉を探してください。
- 造形タイプ:「積層」「押し出し」「ノズル」「シリンジ」「造形サイズ(縦×横×高さ)」
- 印刷タイプ:「食用インク」「インクカートリッジ」「可食シート」「印刷解像度」
造形サイズが書いてあれば造形タイプ、解像度とインクの話しか出てこなければ印刷タイプです。商品名だけでは判別できません。同じ検索結果には、食材を通す前提で作られていない樹脂造形用の3Dプリンターも並びます。
食に関する新しい技術については、農林水産省が所管する「フードテック官民協議会」が2020年10月に設立されています。ただし当サイトで探した範囲では、家庭用の3Dフードプリンターを横並びで比べられる公的な指標は見つかりませんでした。以下は販売ページで確かめられることだけを書きます。
できること、できないこと
造形タイプも印刷タイプも、食材に熱を通す機械ではありません。
- 押し出したペーストはそのままでは生地のままです。焼く・蒸す・冷やすといった工程は別に要ります
- チョコレートのように冷えて固まる食材は出したまま形になりますが、そのぶん温度の管理が要ります
- 印刷タイプは味を変えません。表面の見た目だけが変わります
- 造形も印刷も1個ずつです。同じ絵を何十枚も同時に刷る、といった動き方はしません
「これがあれば料理ができる」機械ではなく、成形と装飾の工程だけを受け持つ機械です。
買う前に決めること
1. 食材をどうやって入れるか
自分でペーストを詰めるシリンジ方式か、メーカー専用のカートリッジ方式かで、扱いが変わります。
シリンジ方式では、食材を押し出せる硬さに自分で寄せることになります。ゆるいと積んだ層が自重で垂れ、硬いとノズルで止まります。粒やすじが残っていてもノズルで止まるので、どこまで裏ごしできるかが、そのまま使える食材を決めます。同じ料理でも、水分を飛ばす・裏ごしする・とろみを付けるといった下ごしらえが一工程増えます。
専用カートリッジ方式は、メーカーが用意した食材やインクしか入りません。硬さの調整は要りませんが、作れるものが最初から決まっています。
ノズルの口径も見てください。太いと細い線が出ず、細いと詰まりやすく、1個にかかる時間が延びます。交換用ノズルが何種類付くかで、引ける線の太さの幅が決まります。
2. 食材が通る部分を外して洗えるか
食材が通るのはシリンジの内側とノズルの細い穴で、どちらも外からは見えません。ここに残ったものは中で固まります。チョコレートは冷えて、でんぷんの多いペーストは乾いて、あとから取りにくくなります。
工具なしで分解できるか、ノズルが単体で外れるかを見てください。分解できない構造だと、前に使った食材が次に混ざります。洗える範囲が、そのまま使える食材の範囲になります。
あわせて、その製品が食品用の器具として売られているかを確認してください。食品用の器具・容器包装については、政令で定める材質(合成樹脂)にポジティブリスト制度があり、個別に規格が定められた物質しか使えないことになっています(消費者庁)。同じ検索結果に並ぶ樹脂造形用の3Dプリンターは、食材が中を通る前提で作られていません。
3. 置き場所は「作る場所」より「洗う場所」で決める
造形タイプは、使うたびにシリンジとノズルを外して洗います。作業台のどこに置くかより、シンクまで運べる場所か、持ち上げられる重さかを先に見てください。
造形中は動かせません。層を重ねている途中で揺れると、積んだ形がずれます。引き出しの開け閉めで揺れる台や、人が通るたびに当たる場所は外します。
室温も効きます。食材は樹脂と違って温度で硬さが変わります。暖かい場所ではゆるくなって層が垂れ、冷たい場所ではノズルで止まりやすくなります。チョコレートのように冷やして固める食材を使うなら、造形中にどこで冷やすかまで決めておくことになります。
出てくるのは食品です。造形が終わったらそのまま置かず、焼く・冷やす・食べるのどれかにすぐ移せる段取りにしておいてください。
4. 形のデータをどこから持ってくるか
造形タイプは形のデータが要ります。本体に入っている形だけで使うのか、自分でデータを用意するのかで、必要な手間が変わります。
樹脂用の3Dデータをそのまま流用できるとは限りません。樹脂のプリンターは宙に張り出す部分を「サポート材」という捨てる支えで受けますが、食材で支えを作れば、その支えも一緒に出てきます。宙に張り出す形を避けられるデータかどうかが、選ぶときの制約になります。
印刷タイプは画像データを使いますが、刷れるのは平らな面だけです。ケーキの上面、コーヒーの泡、可食シートのように、平らに受けられるものが要ります。丸いものや凹凸のあるものには刷れません。
どんな人に向くか
向いている人は、見た目を作ること自体が目的の人です。誕生日のケーキ、店の看板メニューの飾り、イベントの配りものなど、1個に手間をかける場面で使う道具です。やわらかく成形した食事を用意したい、という使い方をされることもあります。
向いていない人もいます。毎日の食事を用意する道具としては向きません。1個ずつ積む、あるいは1個ずつ刷る機械なので、家族分をまとめて出す用途とは動きが合いません。ペーストの下ごしらえと、使うたびのシリンジ・ノズルの洗浄が毎回付きます。専用カートリッジ方式を選ぶなら、その食材やインクを買い続けることになります。
まとめ
販売ページで確かめる順番は3つです。
- 造形サイズが書いてあるか、解像度とインクの話だけか(造形タイプか印刷タイプか)
- 食材はシリンジに自分で詰めるのか、専用カートリッジか
- シリンジとノズルを工具なしで外せるか
そのうえで、この機械は熱を通しません。焼く・冷やすは別の工程です。
新しい種類の家電を選ぶときの考え方は、当サイトのスマート家電の選び方やデザイン家電と電気を長く使う話もあわせてどうぞ。
この記事の内容は下記にもとづいています(2026年9月時点)。個別製品の仕様・対応食材・手入れの方法は、必ず販売ページと取扱説明書をご確認ください。